【最近のウォーニングレター】ASTROM通信 256号

師走のあわただしい時期になりましたが、いかがお過ごしでいらっしゃいますか?
2022年11月16日から、EU-PIC/S GMP Annex11の改訂にむけて、コンセプトペーパーのパブリックコメントの募集が始まりました。

参照先:https://picscheme.org/docview/4967

今のAnnex11は2011年に発出されましたが、昨今の新しい技術の登場に対応していく必要が出てきているため、2026年の適用にむけて、改訂が進められていくようです。
クラウド、AI(人口知能)、 ML(機械学習)などに対応した内容になるようで、非常に興味深いです。
さて今回もアメリカ食品医薬品局(FDA)がアメリカ国外の製薬会社向けに出したウォーニングレター2件を見ていきたいと思います。

FDAがどのような点を問題視して指摘しているかをご確認いただければ幸いです。

最近のウォーニングレターの概要  

注:文中のXXはウォーニングレターでマスキングされている文言及び具体的な社名・品名等です。

■Warning Letter 320-22-25■

2022年3月22日~4月4日のインドの製造所の査察でみつかった原薬製造の重大なCGMP違反について発した2022年9月27日付ウォーニングレターには、下記の指摘事項があげられています。

●指摘1

中間体及び原薬の製造に使用する装置の洗浄及びそのリリースに関する適切な文書化された手順の制定の不履行

<指摘1詳細>

貴社は貴社の原薬の中に不純物XXを検出した後、既存の洗浄手順と業務が、医薬品XXを製造する過程で発生する不純物XX及びXXを含む遺伝毒性不純物を除去または削減できるのかを確認する目的で複数のリスクアセスメントを実施した。また貴社は既存の洗浄手順が中間体と原薬の交叉汚染を削減することを評価するために、非専用製造装置や回収溶媒内の残留物を評価するリスクアセスメントを実施した。貴社のリスクアセスメントは、既存の装置の洗浄手順が、装置の各部品から残留原薬とXXを許容できるレベルまで除去するのに効果的であることを裏付けるデータが不足していた。
例えば、原薬XXの製造後の建物XXとXX内の非専用装置で起きる可能性のある交叉汚染を評価するための貴社の仮説検定プロトコルと、装置のタイプA(製品管の切替)の洗浄は、次の点で不十分である:
・実施された2つのプロトコルは、2019年から2021年に、原薬XXの製造後に非専用装置で製造された原 薬XXのXXロットを確認した。XXの4ロットで、XX以下という限界値付近で計測可能なレベルのXXが確 認された。これらの結果について、更なる調査は実施されなかった。
・原薬XXの製造から切り替えた後に非専用装置で製造された原薬XX、XXまたはXXの最初のロットの特 定を裏付ける文書が不足していた。
・プロトコルは、溶媒を回収するために使用される非専用装置を含む非直接の汚染源からの交叉汚染に 対処していない。

制定された限界値付近の遺伝毒性不純物が確認されたことは、逸脱が起こりうることを示唆している。医薬品XXの製造に使用される、非専用装置で製造された全ての中間体及び原薬は、それらが遺伝毒性不純物に許容できないレベルで汚染されていないことを保証するために、バリデートされたサンプリングと分析試験の対象にされるべきである。
貴社は、原薬XXの製造からの切替後に原薬XX内での遺伝毒性不純物の検出・計量に関し、矛盾するデータを提出した。例えば、原薬XXの製造からの切替後に、遺伝毒性の残留物の累積したキャリーオーバーの可能性の調査中に試験された原薬XXのXXの全てのロットの中に、定量化可能なレベルの不純物XX、XX、XXがあることを報告した。しかし、貴社の品質のリスクアセスメントでは、同じ製品のロット内で不純物XXは検出されなかったと述べた。貴社は、適切な科学的な正当化の理由もなく、好ましくない分析結果を無視した。貴社は、非専用装置で製造された他の中間体や原薬にこれらの遺伝毒性不純物のキャリーオーバーのリスクはないと結論づけた。

貴社は回答の中で、原薬XX、XXの製造を専用装置に制限し、専用の溶媒回収ユニットを使用すると約束した。しかし貴社は、特定の製品の製造キャンペーン中にだけ専用の溶媒回収タンクを使用すると述べた。溶媒回収タンクが特定の製品専用ではないために交叉汚染のリスクは残るので、貴社は非専用の溶媒回収装置から交叉汚染が発生しないことを保証するために、適切にリスクを評価して手順をバリデートする必要がある。

この文書への回答の中で以下の情報を提供せよ:

・交叉汚染の危険性の範囲を評価するための、洗浄の効果の包括的で独立した回顧的なアセスメント残
 留物、不適切に洗浄された可能性のある他の製造装置の特定と、交叉汚染された製品が出荷のために
 リリースされた可能性があるかどうかのアセスメントを含めよ。アセスメントは、洗浄の手順と業務
 の不備を特定し、原薬や最終製品を含む、複数製品を製造するために使用されている製造装置を網羅
 する必要がある。
・貴社の洗浄プログラムの回顧的なアセスメントに基づく、洗浄プロセスと手順の適切な改善を含む是
 正処置・予防処置の計画と、完了のタイムライン装置の洗浄のライフサイクル管理のプロセスにおけ
 る脆弱性のサマリを提出せよ。洗浄効果の向上、全ての製品及び装置の適切な洗浄実施の継続的な検
 証の改善、その他全ての必要な改善を含む、貴社の洗浄プログラムの改善について述べよ。
・貴社の医薬品製造作業におけるワーストケースとして特定された条件を取り入れることに特に重点を
 置いた洗浄バリデーションプログラムへの適切な改善

 改善には、これに限定されないが、以下の全てのワーストケースの特定と評価を含むべきである:

 〇より高い毒性を持つ医薬品
 〇より高い有効性を持つ医薬品
 〇洗浄溶液の中でより低い溶解度の医薬品
 〇洗浄を難しくする特性を持った医薬品
 〇洗浄を最も難しくする拭き取り場所
 〇洗浄前の最大ホールドタイム
 〇さらに、新しい製造装置や新しい製品を導入する前に、貴社の変更管理システムでとられるべき手
  順を述べよ。
 〇製品、工程、装置の洗浄手順の検証とバリデーションのための適切なプログラムが実施されている
  ことを保証する最新の標準操作手順(SOP)のサマリ

●指摘2

中間体及び原薬の品質特性にばらつきをもたらす可能性のある工程ステップの性能の進捗をモニタし管理するための文書化された手順の制定の不履行

<指摘2詳細>

原薬XX、XXの製造のためのXX工程で、不規則な頻度でXXの定量化可能なレベルで不純物XXが発生した。
例えば、貴社は、XX工程で製造された原薬XXのXXとXXのXX内の不純物を検出して定量化するためにサンプリングをして分析試験を実施した。XX(XXppmの制限に対してXXppm)とXX(XXppm以下の制限に対してXXppm)であるロットでXXの定量化可能なレベルの不純物XXを得た。
貴社は、不純物XXを含む遺伝毒性不純物を理論的に減らす工程ステップの効果を評価するために、一連の卓上試験と、商用レベルの検証も実施した。これらの検証では、全ての不純物は効果的に除去され、不純物XX、XXの工程内のモニタリングの追加の必要性はないと結論づけた。これは原薬の商用ロットから得た前述の分析結果にもかかわらずである。貴社は、製造工程がこの不純物を効果的に除去できると宣言したが、XXとXXのいくつかの一部のロットで不純物XXの定量化可能なレベルの出現について更なる調査を実施しなかった。
貴社の卓上試験のデータは貴社の不純物除去が効果的であることを示唆しているが、貴社の商用の製造データは、一貫したレベルで全ての遺伝毒性不純物を除去していないことを示している。原薬の中の不純物のレベルに見られるばらつきは、特別な原因によるばらつきの可能性があるため、貴社は次のいずれかを実施する必要がある:

・原薬内で不純物XXが許容限度のXX%未満であることを示すための、不純物XXまたはその前駆体のXX
 に関する試験の追加
・または、原薬の規格への不純物XXのXXに関する試験の追加

改善されたプロセスの確認は、不純物XXに関するロットのリリース試験のようなロットのリリースを裏付ける追加データを収集することによって実施されるべきである。
我々は、貴社がプロセスの性能分析を実施し、現在製造されている製品について包括的なリスクベースのレビュを実施すると約束したと認識している。

この文書への回答の中で以下の情報を提供せよ:

・是正処置・予防処置と、そのそれらの完了予定日を含む、製造された中間体及び原薬内の遺伝毒性
 不純物の構成、モニタリング、管理を含む調査
・原薬XX、XXの製造中に遺伝毒性不純物の低減または除去に関する工程性能分析から得られたデータと
 結論分析では、特別な原因によるばらつきと、医薬品の品質を保証するためにどのような管理を実施
 するかについても考察すべきである。
・現在製造されている全ての製品に関するリスクベースのレビュの手順

●指摘3

全ての重大な逸脱の調査の不履行

<指摘3詳細>

貴社は制限値の逸脱を含む全ての重大な逸脱を確認し調査することを怠った。例えば、貴社はXXに関する洗浄の確認プロトコルの実施中にXXppm未満という制限に対しXXppmのOOS (Out-of-Specification)の結果を得た。最終報告には、ロットXXの製造とタイプBの洗浄の完了後にXXから採取された拭き取りサンプルのOOSを記録した。最終報告の10章は、OOSの結果にもかかわらず、逸脱もOOSの結果も見つからなかったと述べている。報告は、不適のデータとその後のレビュとこのレポートの承認があったにもかかわらず、タイプBの洗浄は装置から化学的な残留物は効果的に除去されていることがバリデートされたと結論づけている。

この文書への回答の中で以下の情報を提供せよ:

・貴社の品質部門(QU)が効果的に機能するために権限とリソースを与えられていることを保証するため 
 の包括的なアセスメントと改善計画

 アセスメントには、これに限定されないが以下のことを含めるべきである:

 ○貴社で使用されている手順が安定していて適切かどうかの判断
 ○適切な手順の遵守を評価するための、貴社の作業全体のQUの監督に関する規定
 ○QUによるロットの処遇の判定前の、各ロット及びそれに関連する情報の完全で最終的なレビュ
 ○調査の監督と承認と、全ての製品の同一性、濃度、品質、純度を保証するための、QUのその他の
 業務の遂行

・不適合な結果の全ての案件を特定しそれらが適切に対処されていることを保証するために、使用期限 内の原薬の製造または使用期限内のリリースされた原料に関連した工程の適格性またはバリデートの ために使用された全てのデータの回顧的なレビュ

●医薬品の製造停止

貴社がアメリカ市場向け医薬品の製造を停止することを約束したと認識している。この文書への回答の中で、貴社が今後この施設で医薬品の製造を再開するつもりかを明確にせよ。
もしアメリカ市場向け医薬品の製造を再開するつもりなら、作業を再開する前に通知せよ。

●結論

この文書で挙げた逸脱は、貴社の施設に存在する逸脱の包括的なリストではない。貴社には、逸脱を調査し、原因を判断し、再発やその他の逸脱の発生を防止する責任がある。
全ての逸脱を速やかに是正せよ。全ての逸脱に完全に対応がされ、我々が貴社のCGMPの遵守を確認するまで、FDAは貴社の医薬品製造業者としての新しい申請やリストの補完の承認を保留するだろう。我々は、貴社が全ての逸脱に対する是正処置を完了したことを確認するために再査察を行うかもしれない。

出典:https://www.fda.gov/inspections-compliance-enforcement-and-criminal-investigations/warning-letters/lupin-limited-633703-09272022

■Warning Letter 320-23-02■

2022年4月18日~4月19日のメキシコの製造所の査察でみつかった医薬品製造の重大なCGMP違反について発した2022年10月5日付ウォーニングレターには、下記の指摘事項があげられています。

●指摘1

貴社は、公式な、またはその他の制定された要求を超えて医薬品の安全性、同一性、濃度、品質、純度を変える可能性のある誤動作や汚染を防ぐために、適切な間隔で装置や器具を洗浄、メンテナンス、必要に応じて消毒/殺菌することを怠った。 (21 CFR 211.67(a))

<指摘1詳細>

貴社は、XXやXXのようなOTC医薬品を製造している。また貴社は、商用の化学溶液XXをOTC医薬品と同じ製造装置で製造している。洗浄時の製造装置からの残留物の不十分な除去は、その後に非専用装置で製造された医薬品の汚染につながる可能性がある。さらに貴社は、文書化された洗浄手順や医薬品の製造に使用されているタンクXXに関する装置使用ログを保持していなかった。
交叉汚染のリスクにより、商用の化学溶液XXやその他の非医薬品を製造するのに使用しているのと同じ装置を使って医薬品の製造を続けるのは、CGMP上受け入れられない。
この文書に応えて、貴社の施設内の非医薬品と共有している装置での医薬品の製造を中止せよ。貴社が貴社の施設で医薬品と非医薬品の製造を再開するつもりなら、医薬品製造と工業用製品製造のために専用の製造装置を保持するエリアをいかに分離するかを示す計画を提出せよ。
さらに、非医薬品と共有する装置で以前製造された全ての医薬品のリスク評価を実施せよ。各製品について、共有装置による潜在的な汚染のリスクを評価し、まだ販売中の製品の品質と患者の安全のリスクに対応するための、回収や市場からの撤退の可能性を含む計画を提出せよ。

●指摘2

貴社の品質管理部門は、製造された医薬品がCGMPに準拠し、同一性、濃度、品質、純度に関して制定された規格を満たすことを保証するために、その責任を果たすことを怠った。(21 CFR 211.22)

<指摘2詳細>

貴社の品質部門(QU)は貴社の医薬品の製造に関して適切な監視を行わなかった。例えば、貴社のQUは以下のことについて保証するのを怠った:

・ベンダの適格性評価、ロットのリリース、保存検体、調査、苦情、CGMPの訓練の取り扱いを含む、
 QUの役割と責任について述べた適切な手順 (21 CFR 211.22(a)と(d))
・入荷した成分の同一性、純度、濃度、その他の適切な品質特性に関する適切な試験
 (21 CFR 211.84(d)(1)と(2))
・安定性プログラムの遵守 (21 CFR 211.166(a))
・ロットの記録の適切な保持 (21 CFR 211.188)

貴社の品質システムは不十分である。CGMPの規制要件21 CFR part 210, 211を満たすために品質システムとリスクマネジメントのアプローチを実装する助けとして、FDAのガイダンス文書Quality Systems Approach to Pharmaceutical CGMP Regulationsを見よ。

この文書への回答の中で以下の情報を提供せよ:

・貴社のQUが効果的に機能するために権限とリソースを与えられていることを保証するための
 包括的なアセスメントと改善計画

 アセスメントには、これに限定されないが以下のことを含めるべきである:

 ○貴社で使用されている手順が安定していて適切かどうかの判断
 ○適切な手順の遵守を評価するための、貴社の作業全体のQUの監督に関する規定
 ○QUによるロットの処遇の判定前の、各ロット及びそれに関連する情報の完全で最終的なレビュ
 ○調査の監督と承認と、全ての製品の同一性、濃度、品質、純度を保証するための、QUのその他
  の業務の遂行

●医薬品の製造停止

貴社がこの施設での医薬品の製造を停止し、医薬品製造業者として貴社の施設の登録を抹消することを約束したと認識している。もしアメリカ市場向け医薬品の製造を再開するつもりなら、作業を再開する前に通知せよ。

●CGMPコンサルタントの推奨

貴社で確認した違反の性質に基づき、貴社は、CGMPの要件を満たすように貴社を支援するために21 CFR 211.34に記載されている適格性のあるコンサルタントを雇うべきである。貴社がFDAと共に貴社のコンプライアンス状態の解決を達成しようとする前に、適格性のあるコンサルタントは、CGMPの遵守について貴社の製造作業全体の包括的な監査を実施し、貴社の是正処置・予防処置の完了と効果も評価するべきである。

貴社のコンサルタントの使用は、CGMPを遵守するための貴社の義務を軽減するものではない。貴社の経営陣には、継続的なCGMP遵守を保証するために、全ての不備とシステムの欠陥を解決する責任が残る。

●結論

この文書で挙げた違反は、貴社の施設に存在する違反の包括的なリストではない。貴社には、違反を調査し、原因を判断し、再発やその他の違反の発生を防止する責任がある。
FDAは2022年8月12日に輸入警告措置66-40をとった。
全ての違反を速やかに是正せよ。全ての違反に完全に対応がされ、我々が貴社のCGMPの遵守を確認するまで、FDAは貴社の医薬品製造業者としての新しい申請やリストの補完の承認を保留するだろう。我々は、貴社が全ての違反に対する是正処置を完了したことを確認するために再査察を行うかもしれない。

出典:https://www.fda.gov/inspections-compliance-enforcement-and-criminal-investigations/warning-letters/eksa-mills-sa-de-cv-634706-10052022

まとめ

いかがでしたでしょうか。

今回は2件とも、医薬品と非医薬品の製造で共用されている非専用装置の交叉汚染対策に関する指摘が含まれていました。
医薬品・非医薬品の製造で装置を共用することはあまりないかもしれませんが、複数の医薬品で装置を共用することはよくある話かと思います。交叉汚染を防ぐ意味で、洗浄バリデーションの重要性をあらためて感じました。

ところで、最近、FDAが海外の製造所に出すウォーニングレターの数が増えつつあり、少しずつコロナ以前の状態に戻りつつあるように思います。
来年こそコロナが終息することを願うばかりです。
皆様、良いお年をお迎えください。

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【発行責任者】

株式会社プロス 『ASTROM通信』担当 橋本奈央子 hashimoto@e-pros.co.jp

※本記事は株式会社プロスの許可を得て転載しております。

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