【最近のウォーニングレター】ASTROM通信 251号

さわやかな季節になってきましたが、いかがお過ごしでいらっしゃいますか。

さて今回も、アメリカ食品医薬品局(FDA)がアメリカ国内の製薬会社向けに出したウォーニングレター
2件を見ていきたいと思います。
FDAがどのような点を問題視して指摘しているかをご確認いただければ幸いです。

最近のウォーニングレターの概要  

注:文中のXXはウォーニングレターでマスキングされている文言及び具体的な社名・品名等です。

■CMS#622534■

2021年9月27日~10月15日のカリフォルニア州の製造所の査察でみつかった医薬品製造の重大なCGMP違反について発した2022年3月30日付ウォーニングレターには、下記の指摘事項があげられています。

●指摘1

貴社の品質管理部門は、製造された医薬品がCGMPに準拠し、同一性、濃度、品質、純度に関して制定された規格を満たすことを保証する責任を果たさなかった。(21 CFR 211.22)

<指摘1詳細>

貴社は、日焼け止め、痛み止め、にきび治療のようなOTC局所医薬品を製造している。貴社の品質部門(QU)は、貴社のOTC医薬品の製造に関し適切な監督を行っていなかった。例えば、貴社のQUは、以下のことを保証するのを怠った:
・医薬品の各ロットについて、リリース前に微生物試験が実施されレビュされていること。
 (21 CFR 211.165(b))
・OOS(Out-of-Specification)の結果の適切な調査と、徹底的な調査を実施するための文書化された
 手順(21 CFR 211.192)
・変更の適切な文書化とアセスメント(21 CFR 211.100(a))
・適切で継続的な安定性プログラムの確立(211 CFR 211.166(a))
・適切な製品年次照査の実施(211 CFR 211.180(e))
貴社は回答の中で“自社は微生物試験の結果なしに製品をリリースすることは滅多にない。引用された
事例では、最終報告を受け取る前に、微生物ラボへの電話で、品質管理(QC)は口頭の結果を受け取って
いた”と述べた。全ての試験結果(分析証明を含む)を受け取る前に医薬品をリリースすることは容認
できず、1つ以上の品質属性を満たさない医薬品が消費者に出荷されるリスクをもたらしている。また
貴社は“以前の品質部門の職員は有能ではなく、自分たちの職務を遂行することを怠っていた”が、
彼らはもはや会社にいないと述べた。さらに貴社は追加で品質職員を雇うつもりであると述べた。
貴社は、上記の不備が医薬品の品質にどのように影響したかを評価することを怠ったので、貴社の回答は不十分である。また貴社は、追加の品質スタッフがこれらの不備を適切に改善することをいかに保証するかも明らかにすることを怠った。
一貫した医薬品の品質を保証するために、全てのCGMP業務を監督する適切なQUが必要である。
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:
・貴社のQUが効果的に機能するために権限とリソースを与えられていることを保証するための包括的な
 アセスメントと改善の計画
 アセスメントには、これに限定されないが、以下のことを含むべきである:
 〇貴社で使用される手順が安定していて適切であるかどうかの判断
 〇適切な手順の遵守を評価するためにQUが貴社の作業全体を監督するための規定
 〇ロットの処遇を判断する前に貴社の医薬品の各ロットを分析するために使用されている化学及び
微生物試験の方法と規格のリストと、それに関連する文書化された手順
 〇QUがロットの処遇の判断をする前の各ロットとそれに関連する情報の完全かつ最終的なレビュ
 〇全ての製品の同一性、濃度、品質、純度を保証するための、調査と監督の承認及びQUのその他全
の職務の遂行
・逸脱、不一致、苦情、OOSの結果、不具合を調査する貴社の全体システムの包括的で独立したアセ
メント
 このシステムを改善するための詳細はアクションプランを提出せよ。
 貴社のアクションプランは、これに限定されないが、調査能力、調査範囲の決定、根本原因の評価、
 是正処置・予防処置(CAPA)の効果、QUの監督、文書化された手順の著しい改善を含めるべきである。
 調査の全ての段階が適切に実施されることを貴社がいかに保証するつもりかを述べよ。
・変更管理システムの包括的で独立したアセスメント
 このアセスメントは、これに限定されないが、貴社のQUによって、変更を保証するための貴社の手
が正当である根拠が示され、レビュされ、QUにより承認されていることを含むべきである。貴社の
変更管理プログラムは、変更の効果の判断のための規定も含むべきである。
・貴社の安定性プログラムの妥当性を保証するための包括的で独立したアセスメメントとCAPAの計画
貴社の改善されたプログラムはこれに限定されないが以下のことを踏むべきである:
 〇安定性を示す方法
 〇出荷許可前に、市販の容器施栓システムの中の各製品の安定性の検証
 〇うたわれている品質保証期限が妥当かどうかを判断するために、各製品の代表的なロットが毎年
  プログラムに追加されていくような継続的なプログラム
 〇各ステーション(タイムポイント)で試験される特定の属性の詳細な定義
 〇貴社の改善された安定性プログラムのこれら及びのその他の要素を述べた全ての手順

●指摘2

貴社は、貴社が製造した製品が、それが持つとされている、または、持つと表示されている同一性、濃度、品質、純度を持つことを保証するために設計された製造及び工程管理に関する適切に文書化された手順を制定することを怠った。(21 CFR 211.100(a))

<指摘2詳細>

貴社には、貴社の医薬品に関する適切なプロセスバリデーションが欠けていた。例えば、貴社は貴社の痛み止めの医薬品に関するプロセスバリデーションの文書化され承認されたプロトコルを持っていな
かったことを我々査察官に認めた。貴社は、3つの日焼け止め医薬品を組み込んだ文書“配合及び充填のプロセスバリデーション”を提出したが、その文書には、レビュと承認の署名がなかった。さらに、貴社には、貴社の充填ラインの装置に関する適格性評価が不足していた。
貴社は回答の中で、貴社の痛み止めの医薬品の回顧的なバリデーションを実施し、貴社のバリデーション手順を改訂するつもりであると述べた。また、貴社は、文書が適切にレビュされ、文書化されていることを保証するために文書“配合及び充填のプロセスバリデーション”と、その他のバリデーション文書をレビュするつもりであるとも述べた。

貴社の回答は不十分である。貴社は、バリデートされていない状態で製造され、出荷された医薬品の適切なリスクアセスメントを提出しなかった。さらに、貴社は、出荷前に予測バリデーションが実施されることを確実にするための是正の詳細を提出しなかった。また、貴社は、各医薬品がその後一貫した管理状態を維持することを保証する方法についても述べなかった。さらに貴社は、現在の職員の再教育と新しい職員の採用が、貴社の装置の適格性評価の手順が守られることをどうやって保証するかについても言及しなかった。

プロセスバリデーションは、ライフサイクルを通して、工程の設定と管理状態の安定性を評価する。製造工程のそれぞれの重要な段階は適切に設計され、投入される原材料、中間材料、最終製品の品質を保証しなければならない。工程の適格性評価の検証は、初期の管理状態が確立しているかどうかを判断する。

商用の販売の前に、工程の適格性評価の達成が必要である。その後、貴社が製品のライフサイクルを通じて安定した製造作業を維持していることを保証するために、工程性能と製品品質の継続的で慎重な監視が必要である。

この文書への回答の中で以下の情報を提供せよ:
・貴社の製造工程が適切な規格と製造の標準を一貫して満たすように、ばらつきを特定し、全ての原因を管理するデータ駆動型の科学的に理にかなったプログラムがあることを保証するための、各医薬品の製造工程のアセスメント
 このアセスメントには、これに限定されないが、試験システム(貴社や貴社の契約試験機関で使用される分析方法を含む)、投入原材料の品質、各製造工程のステップと管理の信頼性が含まれる。
・製品のライフサイクルを通じて、管理状態を保証するための貴社のバリデーションプログラムの、関連する手順を添えた詳細なサマリ

 継続的な管理状態を保証するために、工程の性能適格性評価のプログラムとロット間およびロット内の継続的なモニタリングについて述べよ。

・販売されている貴社の各医薬品の工程の性能適格性評価を実施するためのタイムライン
・装置及び設備の貴社の工程性能のプロトコルと適格性評価の文書化された手順
・継続的な管理状態を保証するためのロット間およびロット内のばらつきの慎重なモニタリングを含む、貴社の各製造工程の設計、バリデーション、維持、管理、モニタリングに関する詳細なプログラム また、貴社の装置と設備の適格性評価に関するプログラムを含めよ。
・設備と装置の、定期的で慎重な運用管理監督を実装するためのCAPAの計画
 この計画は、とりわけ、装置/設備の性能の問題の迅速な検知、修理の効果的な実行、適切な予防保
計画の遵守、装置/設備のインフラストラクチャに対するタイムリーな技術的アップデート、継続的
マネジメントレビュのためのシステムの改善を保証すべきである。

●指摘3

貴社は、装置の洗浄及びメンテナンスに関する適切に文書化された手順を制定し遵守することを怠った。
(21 CFR 211.67(b))

<指摘3詳細>

貴社は、貴社の設備で製造されるOTC医薬品と医薬品以外の製品間の交叉汚染を防ぐための洗浄手順が適切であることを示していなかった。貴社は、複数の医薬品と化粧品に共有されている充填装置XXを
貴社の医薬品の製造中に利用している。我々査察官は、これらの充填ラインと関連する装置の不十分な洗浄とメンテナンスに気付いた。

■不十分な洗浄バリデーション
貴社のラインXXのチューブ充填装置XXの洗浄バリデーションのプロトコルは“製造部門で使用されて
いる全ての充填機械を代表する”と述べた。しかし、充填ラインXXは、同一の装置を使用せず、ラインXXのチューブ充填装置XXの洗浄が貴社のその他の充填ラインをどのように代表しているかに関するエビデンスや科学的な正当化の理由を提出することを怠った。
また、この洗浄バリデーションのプロトコルは、処方の性質や有効成分の量(すなわち、XX)により、
ワーストケースのシナリオになると考えられると述べて、日焼け止め医薬品XXを包含していた。しかし、貴社はこれらの製品がどうしてワーストケースとみなされ、貴社で製造される全ての医薬品をいかに代表しているかに関する科学的な正当化の理由を提出することを怠った。我々は、貴社が有効成分XXのもっと高い他のOTC医薬品と、他の有効成分を含む他の局所医薬品(たとえば、にきびクリームおよび鎮痛バームおよびローション)を製造していることに注目している。

貴社は回答の中で、他の充填ラインの洗浄バリデーションを完了し、他の医薬品がワーストケースか
どうかを評価し、要求されれば、追加のバリデーションを実施すると約束した。さらに貴社は、リスクアセスメントも含め、ラインXXで製造される製品のレビュを実施するつもりであり、代表としてXXを選択したことに関する正当化の理由を文書化すると述べた。貴社は、是正に関する詳細を提出せず、これらの是正が完了する前に、医薬品の製造にまだ装置を使用する予定かどうかを議論しなかったので貴社の回答は不十分である。

■装置の洗浄に関する不適切な文書化とバリデーション
貴社は、貴社の手順で求められているように、使用前に、充填ラインの装置の洗浄について文書化し検証することを怠った。例えば、貴社のXXのロットXXのバッチレコード上で、貴社の製造職員と品質の担当者は、XXの前のロットXXについて、関連する充填装置と共に洗浄され、使用できる準備になっていることを署名によって確認した。しかし、ロットXXの充填ラインの使用と装置の洗浄を記した装置のメンテナンスのログシートの入力がなかった。代りに、前の使用と洗浄は、XXのロットXXのためのものだったと記されている。

貴社は回答の中で、貴社の査察官により指摘したロットに関する入力がないことを調査し、再教育を実施すると約束した。貴社は、製造された全ての医薬品が文書化されていることを確認するための調査の拡大に関する詳細と、全ての関連する装置が適切に洗浄されているかをいかに示すかの詳細を提出しなかったので、貴社の回答は不十分である。さらに、貴社は、ログシートの入力がないにもかかわらず、バッチレコードのこれらの活動が完了したとして署名した理由について説明していない。

■精製水(PW)システムの消毒の欠如
貴社のPWシステムの消毒手順によれば、貴社のPWシステムはXXに消毒される予定である。しかし、貴社は、貴社の精製水システムがFDAの査察時のXX以内に消毒されたことを示すためのエビデンスを提出できなかった。
貴社は回答の中で、貴社の品質部門がXXベースでPWシステムを消毒し続ける予定であると述べ、品質部門が適切に消毒の記録をしなかったことについての逸脱処理を開始するつもりであると述べた。貴社は、期間の間にPWシステムが適切に消毒されたというエビデンスを提出せず、消毒の欠如が貴社の医薬品の製造と製造装置の洗浄に使用されるPWの品質にどのような影響を与えるかについて議論しなかったので、貴社の回答は不十分である。

この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:
・交叉汚染の範囲を評価するための貴社の洗浄の効果の包括的で独立した回顧的なアセスメント
 残留物と不適切に洗浄された可能性のあるその他の製造装置の特定、交叉汚染された製品が出荷のめ
 にリリースされたかどうかのアセスメントを含めよ。アセスメントには洗浄の手順と業務の不十分
特定し、2製品以上の製造に使用される製造装置の部品を網羅すべきである。
・貴社の洗浄プログラムの回顧的アセスメントに基づく、貴社の洗浄手順と業務の改善、完了までの
タイムラインを含むCAPAの計画
 装置の洗浄のライフサイクル管理に関する貴社の手順の脆弱性の詳細なサマリを提出せよ。
 洗浄効果の向上、全ての製品と装置に関する適切な洗浄の実施の継続的な検証の改善、その他必要な
 全ての改善を含む、貴社洗浄プログラムの改善について述べよ。
・貴社の医薬品製造作業におけるワーストケースとして特定された条件を取り入れることに特に重点を
 置いた洗浄バリデーションプログラムへの適切な改善
 改善には、これに限定されないが、以下の全てのワーストケースの特定と評価を含むべきである:
〇より高い毒性を持つ医薬品
 〇より高い有効性を持つ医薬品
 〇洗浄溶液の中でより低い溶解度の医薬品
 〇洗浄を難しくする特性を持った医薬品
 〇洗浄を最も難しくする拭き取り場所
 〇洗浄前の最大保持時間
 さらに、新しい製造装置や新しい製品を導入する前に、貴社の変更管理システムでとられるべき手
を述べよ。
・製品、工程、装置の洗浄手順の検証とバリデーションのための適切なプログラムが実施されていることを保証する最新の標準操作手順(SOP)のサマリ

●指摘4

貴社は、ラボの管理メカニズムで必要とされる業務の実行時に文書化することや、必要なラボの管理
メカニズムからの逸脱を記録し弁明することを怠った。(21 CFR 211.160(a))

<指摘4詳細>

貴社は、貴社の医薬品を製造するための構成要素としてPWを使用している。貴社は、XXベースで貴社精製水システムの適切なサンプリングの実施や圧力計のモニタリングの定期的な記録を含む、精製水
システムの手順に従うことを怠った。

さらに、我々の査察官によるPWシステムの試験結果のレビュで、貴社の手順で指定された限界値と比べて、多数のサンプルのOOSの試験結果を発見した。例えば、貴社の導電率の規格はXXであるが、我々のレビュで、最大2.30μS/cmの多数のOOSの結果を発見した。さらに、貴社の総有機炭素の規格はXXppmであるが、我々のレビュで、最大5.12ppmの多数のOOSの結果を発見した。これらのOOSの結果は調査されていなかった。

貴社は回答の中で、PSシステムのXXのサンプリングを実施、XXのチェックを実施すると約束した。貴社は、適切なログシートにチェックを記録し、これが実行されなかったことの逸脱調査を開始すると約束した。また貴社は、PWのサンプル漏れの影響のリスクアセスメントを提出した。貴社は“水質検査に関し、OOSの事象はなかった”と結論づけた。精製水システムの消毒の欠如、我々のレビュ中にみつかった多数のサンプルのOOSの結果を考えると、PWシステムのサンプリグの欠如が貴社製品の品質にどれくらい影響があるかについて適切に取り組んでいないので、貴社の回答は不十分である。
貴社の製造作業でのPWの広範囲の使用や、貴社の製造した製品の兆候を考慮すると、XXのモニタリングは不十分である。さらに、貴社は、貴社の手順で記述された最低限度のスケジュールを順守することを怠っている。定期的な水のモニタリングがなければ、貴社のPWが貴社の医薬品の製造に適した最低限度の微生物及び化学の標準を満たすという保証が欠如している。
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ;
・貴社の精製水システムの設計、管理、メンテナンスの包括的で独立したアセスメント
・PWシステムのバリデーション報告
 また、システムの設計や、継続的な管理やメンテナンスのためのプログラムに対してなされた全て
改善のサマリを含めよ。
・貴社で製造される医薬品の各ロットに使用するための適合性を保証するために、水の定期的な微生
試験を明記した、貴社の精製水システムのモニタリングの手順
・貴社の精製水システムで使用されている、総菌数や好ましくない微生物に関する、現在のアクション/アラート限界
・発見された精製水システムの不具合の、現在アメリカに販売されている全ての医薬品のロットの品質 への潜在的な影響に対処した詳細なリスクアセスメント
 リスクアセスメントに対応して顧客への通知や製品の回収といった貴社がとろうとしているアクションを明記せよ。

●品質システム

貴社の品質システムは不十分である。CGMPの規制要件を満たすために品質システムとリスクマネジメントのアプローチを実装するための助けとして、FDAのガイダンス文書Quality Systems Approach to Pharmaceutical CGMP Regulationsを見よ。

●プロセスバリデーション

FDAがプロセスバリデーションの適切な要素と考える一般的な原則とアプローチについて、FDAの
ガイダンス文書Process Validation: General Principles and Practicesを見よ。

●CGMPコンサルタントの推奨

貴社で確認した違反の性質に基づき、我々は、CGMPの要件を満たすように貴社を支援するために21 CFR 211.34に記載されている適格性のあるコンサルタントを雇うことを強く勧める。貴社のコンサルタントの使用は、CGMPを順守するための貴社の義務を軽減するものではない。貴社の経営陣には、継続的なCGMP順守を保証するために、全ての不備とシステムの欠陥を解決する責任が残る。

●結論

この文書で挙げた違反は、貴社の施設に存在する違反の包括的なリストではない。貴社には、違反
を調査し、原因を判断し、再発やその他の違反の発生を防止する責任がある。
全ての違反を速やかに是正せよ。この問題への即座の適切な対処の不履行は、制限のない差し押さえ、強制命令を含む、さらなる通知のない制限または法的なアクションにつながるかもしれない。未解決
の違反は、他の連邦機関の契約授与も妨げるかもしれない。

違反への対処の不履行は、FDAの輸出証明の発行の差し控えにもつながるかもしれない。全ての違反に完全に対応がされ、我々が貴社のCGMPの遵守を確認するまで、FDAは貴社の医薬品製造業者としての新しい申請やリストの補完の承認を保留するだろう。我々は、貴社が全ての違反に対する是正処置を完了したことを確認するために再査察を行うかもしれない。

出典:https://www.fda.gov/inspections-compliance-enforcement-and-criminal-investigations/warning-letters/verde-cosmetic-labs-llc-622534-03302022

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■CMS#625479■

2021年11月29日~12月1日、2021年12月9日のカリフォルニア州の製造所の査察でみつかった医薬品製造の重大なCGMP違反について発した2022年5月12日付ウォーニングレターには、下記の指摘事項があげられています。

●指摘1

貴社は、装置の洗浄及びメンテナンスに関する適切に文書化された手順を制定し遵守することを怠った。(21 CFR 211.67(b))

<指摘1詳細>

貴社は、貴社自身のブランドのXX、顧客のためのXXを含むOTC医薬品を製造している。貴社は多数の非医薬品である工業製品(例:XXウインドウクリーナーとXXワックス)を製造するために使用しているのと同じ装置を使ってこれらの医薬品を製造している。貴社は、医薬品が非医薬品に交叉汚染されていないことを保証するための適切な洗浄手順に欠けている。これは2017年の査察からの繰り返しの指摘結果である。

XXブランドのXXウインドウクリーナーの安全データシートには“急性(即時の)の健康上の危険”、
“飲み込むと有害かもしれない”、“目の炎症を引き起こす”と記載されている。さらに、XXブランド
のXXワックスは製造装置から除去するのが難しく、この共有装置で製造している製品を汚染する可能性がある。

交叉汚染のリスクにより、危険な工業用グレードの洗浄用製品または他の非医薬品の製品を製造するたに同じ装置を使って医薬品の製造を続けることは、CGMP上受け入れられない。
貴社は回答の中で、ラボの装置のメンテナンスと洗浄の手順を作るつもりで、共有装置の洗浄バリデーションを実施するつもりであると述べた。

貴社は、この共有装置で製造された医薬品のロットの潜在的な交叉汚染のリスクと製品品質への影響を評価していなかったので、貴社の回答は不十分である。

この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:
・工業製品と共有されている装置で貴社が以前製造した全ての医薬品のリスクアセスメント
 各製品に関し、共有装置による潜在的な汚染のリスクを評価し、回収の可能性や市場からの撤退を含    む、流通中の製品の製品品質と患者の安全性のリスクに対処するための貴社の計画を提供せよ。
・貴社の製造所の医薬品と非医薬品の両製品の製造に関する貴社の計画
 もし貴社が貴社の製造所で医薬品と非医薬品の両製品の製造を続けるつもりなら、貴社の医薬品の製 と工業製品の製造作業のための専用製造装置を保持するエリアを分ける計画を提出せよ。
・貴社の医薬品製造作業におけるワーストケースとして特定された条件を取り入れることに特に重点を  置いた洗浄バリデーションプログラムへの適切な改善
 改善には、これに限定されないが、以下の全てのワーストケースの特定と評価を含むべきである:
 〇より高い毒性を持つ医薬品
 〇より高い有効性を持つ医薬品
 〇洗浄溶液の中でより低い溶解度の医薬品
 〇洗浄を難しくする特性を持った医薬品
 〇洗浄を最も難しくする拭き取り場所
 〇洗浄前の最大保持時間

 さらに、新しい製造装置や新しい製品を導入する前に、貴社の変更管理システムでとられるべき手順を述べよ。
・製品、工程、装置の洗浄手順の検証とバリデーションのための適切なプログラムが実施されていることを保証する最新の標準操作手順(SOP)のサマリ

●指摘2

貴社は医薬品の各ロットについて、リリース前に、同一性、有効成分の濃度を含む医薬品の最終規格の一致について適切なラボの判断を行うことを怠り、好ましくない微生物を含まないことを求められている医薬品の各ロットについて、必要に応じて適切なラボの試験を実施することを怠った。
(21 CFR 211.165(a)(b))
また、貴社は、試験方法の正確性、感度、特異性、再現性を確証することを怠った。
(21 CFR 211.165(e))

<指摘2詳細>

〇製品が分析の規格を満たすと判断する前の医薬品のリリース
貴社は、リリース前に適切な最終製品試験をせずにOTC医薬品である抗菌ハンドソープXXロット#1135をリリースし出荷した。貴社は、2020年4月6日に最終医薬品をリリースし、2020年4月8日に顧客に
出荷した。しかし、貴社は、2020年4月18日まで微生物の分析結果と、2020年5月7日まで有効成分PCMX(クロロキシレノール)の分析結果を受け取っていなかった。これは2017年の査察からの繰り返しの指摘結果である。

〇不適切なバリデーション方法
貴社は、出荷のリリース前に製品の合格を判断するために使用されている分析試験方法の適切なバリ
デーションと検証(米国薬局方(USP)の標準的な方法)が欠けていた。
貴社は、ハンドソープXXロット#2236のリリース試験の基準の1つとしてXXを使用している。貴社は、XXの合格基準範囲を判断するために使用されている試験方法が、使用目的に合っていることがバリデーションによって裏付けられていることを示すための文書の提出を怠った。
分析方法は、使用目的に合っていて、適用されるUSPの標準的な方法と同等かまたはそれ以上であることを示すためにバリデートされていなければならない。貴社の試験方法の正確性、感度、特性、再現性の検証は、貴社が製造した医薬品が化学及び微生物の特性に関して制定された規格を満たすかどうか
判断するために不可欠である。
貴社は回答の中で、上の例は今より古いロットからのもので、現在は、出荷の前に全ての最終製品の
分析結果を受け取っていると述べた。貴社は、医薬品のリリースに使用されている試験手順を改訂し、試験方法XXをバリデートし、合格基準はバリデーションに基づいて正当化するつもりでいる。
貴社は、貴社の最終製品の適切なリリース試験の実施の不履行に対処しなかったので、貴社の回答は
不十分である。また貴社はクロロキシレノールの同一性や濃度に関す貴社の試験方法のバリデーション
や検証に関する十分な情報を提出しなかった。

この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:
・ロットの処遇を判断する前に貴社の医薬品の各ロットを分析するために使用されている試験方法を 含む化学及び微生物の規格のリスト
 〇この文書の日付時点で使用期限内にあるアメリカに出荷された医薬品の全てのロットの品質を  判断するための、保管サンプルの全ての化学及び微生物試験の実施に関するアクションプランとタイムライン
 〇各ロットの保管サンプルの試験から得られた全ての結果のサマリ
  もしそれらの試験が、医薬品の基準以下の品質を明らかにした場合、顧客への通知や製品の回収
  のような迅速な是正処置をとること。
・貴社のラボの業務、手順、方法、装置、文書、分析者の能力に関する包括的で独立したサードパーティのアセスメント
 このアセスメントは、これに限定されないが、方法の適合性の基準、試験方法が目的に合っているか どうかを判断するためのバリデーション(またはUSP標準方法に関する検証)のレビュを含めるべき である。このレビュに基づき、貴社のラボのシステムの改善とその効果の評価をするための詳細な
 計画を提出せよ。

●指摘3

貴社は貴社が製造する医薬品が、それが持つとされる、または持つと表示されている同一性、濃度、
品質、純度を持っていることを保証するために設計された製造及び工程管理のための文書化された
手順を制定することを怠った。(21 CFR 211.100(a))

<指摘3詳細>

〇製品が分析の規格を満たすと判断する前の医薬品のリリース
貴社が医薬品を製造し、装置を洗浄するために使用されている水は、貴社がバリデートしていない
システムから得ている。貴社は、精製水システムが、微生物の標準を含むXX水に関するUSP標準に
一致し、医薬品の使用に適した水を一貫して製造するという保証に欠けている。これは2017年の
査察からの繰り返しの指摘結果である。
さらに、貴社は貴社のOTC医薬品のための製造工程がバリデートされていることを示すためのデータ
の提供を怠った。査察中、貴社は、XXまで工程内で保管されている可能性がある抗菌ハンドソープ
に関し、バルクのホールドタイムの検証を提出できなかった。貴社は、検証が存在するか知らなか
ったが、プロセスは長い間実施されており、不具合は発生していなかったと述べた。
FDAがプロセスバリデーションの適切な要素と考える
FDAのガイダンス文書Process Validation : General Principles for general principles and approaches
を見よ。
貴社は回答の中で、貴社に精製水システムのバリデーションは進行中で、USPのXX水が製造されて
いることを示すためのバリデーションを実施するつもりであると述べた。貴社のバリデーション
計画の一環として、セパシア菌群(BCC)に関する試験を含めよ。BCCは、非滅菌の水性医薬品内に
汚染のリスクをもたらす。医薬品内のBCCの汚染の重大性に関する更なる情報については、FDAが
セパシア菌群が非滅菌の水性医薬品内に汚染リスクをもたらすことを医薬品製造業者にアドバイス
している2021年7月7日の勧告を見よ。
貴社は、貴社の精製水システムの継続的な管理とメンテナスに関する包括的な提出することを怠った
ため、貴社の回答は不十分である。貴社は、システムが適切に設計されず、バリデートされていな
かった理由に対処することを怠った。さらに貴社の回答は、より慎重でタイムリーな運用の監視を
確実に行うための予防処置に欠けていた。また貴社は貴社の医薬品の製造に使用されている水がその
アクション限界を満たすことを保証するために取ろうとしている暫定的なアクションについて述べ
なかった。

この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:
・精製水システムの設計、管理、メンテナンスの包括的な改善計画
 〇精製水システムのバリデーションレポート
 また、継続的な管理とメンテナンスのために、システムの設計のプログラムに対してなされた改善 のサマリを含めよ。
・貴社の精製水システムXXに使用されている総菌数と好ましくない微生物に関する現在のアクション/ アラート限界
 また、各医薬品の処方(成分、組成のパーセント)を含め、リリース試験の一環としてBCCについて
 各ロットの試験をするつもりかについて述べよ。リリース試験の規格は、貴社の水性医薬品にBCCが 含まれていないことを保証するために、ある程度、処方とバリデート済の製造ステップに基づいて
 開発されるべきである。
・使用期限内の現在アメリカで流通中の製品の全ロットに、発見された精製水システムの不具合が
 与える可能性のある影響に対処した詳細なリスクアセスメント
 リスクアセスメントに対応して、顧客への通知や製品の回収など貴社がとろうとしているアクション を明記せよ。
 貴社で製造される医薬品の各ロットに使用するための受容性を保証するために水の定期的な微生物 及び化学試験を明記した貴社の精製水システムのモニタリングの手順
・USP標準のXX水の規格と適切な微生物の限界値を満たす水をシステムが一貫して精製できることを 保証する継続的な管理、メンテナンス、モニタリングに関する貴社のプログラムを管理する手順
・製品のライフサイクルを通じて管理状態を保証するための、貴社のバリデーションプログラムの
 関連する手順を添えた詳細なサマリ
・継続的な管理状態を保証するための、工程の性能適格性評価とロット内及びロット間のばらつきを 継続的にモニタリングするための貴社のプログラムについて述べよ。
・販売されている製品の工程の性能適格性評価の実施、貴社の精製水システムのバリデーションの
 完了のタイムライン
 貴社のバリデーション活動の完了までに行う暫定的な手段または追加の管理についても含めよ。

●指摘4

貴社の品質管理部門は、貴社で製造された医薬品がCGMPに従い、制定された同一性、濃度、品質、
純度に関する規格を満たすことを保証する責任を果たすことを怠った。 (21 CFR 211.22)

<指摘4詳細>

貴社には適切な品質部門(QU)が欠けていた。例えば貴社のQUは、QUの役割、責任、権限を述べた手順を制定することを怠った。また、貴社の医薬品の製造作業のQUによる監督は不十分だった。例えば、

貴社のQUは以下のことを怠った:
・同一性、濃度、品質、純度に影響を与える規格の承認・拒絶やレビュ
・変更管理プログラムの制定
・最終製品のラベルの発行と照合の手順
・年次製品照査の実施
さらに貴社は、供給者の適格性評価のプログラムも、貴社の顧客または供給者のCGMP上の役割や責任

の記述も持っていない。
また、貴社は、適切な安定性プログラムも欠けている。査察で、2013年12月18日以来、安定性試験が
実施されていなかったことを発見した。
貴社は回答の中で、アサインされた明確な責任で手順を最新化し、最終製品ラベルの手順を作成する
ことを約束した。また、貴社は変更管理プログラムを実装し、全ての医薬品の記録をレビュするとも
述べるつもりであるとも述べた。貴社はその機能を実施し、不具合の根本原因を特定するというQUの
根本的な不具合に対処しなかったので、貴社の回答は不十分である。さらに、使用期限内にある市場
の全ての製品の回顧的レビュとリスク評価や、この評価によりとられるアクションが欠けている。

この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:
・QUが効果的に機能するために権限とリソースが与えられていることを保証するための包括的な
 アセスメントと改善計画

 アセスメントにはこれに限定されないが以下のことも含むべきである:
 〇貴社により使用されている手順が安定していて適切かどうかの判断
 〇適切な手順の遵守を評価するための貴社作業全体のQUの監督の規定
 〇ロットの処遇を判断する前の各ロットと関連する情報の完全で最終的なレビュ
 〇全ての製品の同一性、濃度、品質、純度を保証するための、調査と監督の承認及びQUのその他  全ての職務の遂行
  また、これに限定されないが、製造/品質の問題に積極的に対処し、継続的な管理状態を保証する  ために、タイムリーにリソースを提供することを含む、貴社の経営陣が品質保証と信頼できる
  作業をいかにサポートするかを述べよ。
・貴社の安定性プログラムの妥当性を保証するための包括的なアセスメントと是正処置・予防処置 (CAPA)の計画

 貴社の改善されたプログラムには、これに限定されないが以下のことを含めるべきである:
 〇安定性を示す方法
 〇出荷許可前の、市販の容器施栓システムの中の貴社の各製品の安定性の検証
 〇うたわれている品質保証期限が妥当かどうかを判断するために、各製品の代表的なロットが毎年  プログラムに追加されていくような継続的なプログラム
 〇各ステーション(タイムポイント)で試験される特定の属性の詳細な定義
・貴社の改善された安定性プログラムのこれら及びのその他の要素を述べた全ての手順
・成分、容器、蓋の全ての供給者がそれぞれ適格で、原材料に適切な使用期限またはリテストの日付 が付与されているかどうかを判断するための貴社の原材料システムの包括的なレビュレビュは、入荷した原材料の管理が、不適切な成分、容器、蓋の使用を防ぐために適切かも判断すべきである。
 また、これに限定されないが、製造/品質の問題に積極的に対処し、継続的な管理状態を保証する
 ために、タイムリーにリソースを提供することを含む、貴社の経営陣が品質保証と信頼できる作業 をいかにサポートするかを述べよ。

●不正商標表示違反

省略

●製造所での繰り返しの指摘

2017年7月20日~21日の前回の査察で、FDAはCGMPの同様の査察結果を指摘した。貴社は回答の中で、これらの査察結果に関する具体的な改善を提案した。繰り返しの不具合は、医薬品の製造作業に
対する経営陣の管理監督が不十分であることを示している。

●CGMPコンサルタントの推奨

貴社で確認した違反の性質に基づき、我々は、CGMPの要件を満たすように貴社を支援するために
21 CFR 211.34に記載されている適格性のあるコンサルタントを雇うことを強く勧める。貴社の
コンサルタントの使用は、CGMPを順守するための貴社の義務を軽減するものではない。貴社の経営陣には、継続的なCGMP順守を保証するために、全ての不備とシステムの欠陥を解決する責任が残る。

●結論

この文書で挙げた違反は、貴社の施設に存在する違反の包括的なリストではない。貴社には、違反
を調査し、原因を判断し、再発やその他の違反の発生を防止する責任がある。
全ての違反を速やかに是正せよ。この問題への即座の適切な対処の不履行は、制限のない差し押さえ、強制命令を含む、さらなる通知のない制限または法的なアクションにつながるかもしれない。未解決
の違反は、他の連邦機関の契約授与も妨げるかもしれない。
違反への対処の不履行は、FDAの輸出証明の発行の差し控えにもつながるかもしれない。全ての違反
に完全に対応がされ、我々が貴社のCGMPの遵守を確認するまで、FDAは貴社の医薬品製造業者として
の新しい申請やリストの補完の承認を保留するだろう。我々は、貴社が全ての違反に対する是正処置
を完了したことを確認するために再査察を行うかもしれない。

出典:https://www.fda.gov/inspections-compliance-enforcement-and-criminal-investigations/warning-letters/genlabs-corporation-625479-05122022

まとめ

いかがでしたでしょうか。

昨今、国内で承認書と異なる手順での医薬品の製造が多数みつかりましたが、ウォーニングレターの指摘にあがっている、リリース前の品質確認の不足、手順や記録の不備、プロセスバリデーションの不備、品質部門の責務の不履行といった内容を見ると、適切な手順を制定しそれを順守し続けることの大変さは万国共通だということをあらためて感じます。

弊社サービスのプロス

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【発行責任者】

株式会社プロス 『ASTROM通信』担当 橋本奈央子 hashimoto@e-pros.co.jp

※本記事は株式会社プロスの許可を得て転載しております。

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