本邦において、来春に「GMP省令」および「QMS省令」が改正されることとなった。共に国際整合を図るため、医薬品及び医療機器における規制要件の改正が必要になったわけである。
GMP省令の改正においては、おおよそ以下の要件が追加されることになりそうだ。
1.医薬品品質システム
2.承認書遵守の徹底
3.PIC/S GMPガイドライン重要項目
4.品質保証(QA)業務担当の設置
5.品質リスクマネジメント(第五条)
6.製販業者への連絡・連携
7.設備共用に関する規定
8.Data Integrity
9.原料及び資材の参考品保管・製品の保存品保管(第十四条に追加)
10.製品品質の照査(第十五条)
11.安定性モニタリング(第十六条)
12.原料等の供給者管理(第十七条)
また、用語の定義がICH-Q10と整合される。
例えば、「医薬品品質システム」、「上級経営陣」、「是正措置」、「予防措置」、「品質」などが第2条(定義)に追記されることとなった。
この中でも、「医薬品品質システム」というものは聞き慣れない用語であると思われる。
品質システム(QS:Quality System)はISO-9001では品質管理システム(QMS:Quality Management System)と呼ばれている。
品質システムはPDCA(Plan、Do、Check、Action)を基本とする。
「医薬品品質システム」においては、経営層(トップマネジメント)の関与が求められる。
トップマネジメントは、医薬品品質システムの確立と実施の責任を持つ。すなわち企業全体としての品質保証が要求されるのである。
また、経営層は定期的にマネジメントレビュによって品質をレビュし、「医薬品品質システム」の見直しを実施しなければならない。
それにより、医薬品のライフサイクル全期間での継続的改善を促進することとなる。
さらに品質保証部門(QA)は、是正措置や予防措置(CAPA)を通じて、品質の改善を実施しなければならない。
日本企業はCAPAを適切に理解していない。それが最大の問題である。
そもそもGMPとは「医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準」である。
つまり基準に過ぎない。
その中には、品質管理、品質リスクマネジメント、品質保証といった概念がないのである。
それら3つのカテゴリを補足したものがいわゆるICH Qトリオ(Q8、Q9、Q10)である。
これまで本邦では、ICH Qトリオは省令ではなく課長通知として発出されてきた。
今般、これらの概念がGMP省令に盛り込まれることになった訳である。
日本の医薬品企業においては、ISO-9001などの品質マネジメント規格に精通した要員が不足している。またISO-9001に従った品質マニュアルを確立している企業もほとんど存在しない。
したがって、今後多くの製薬企業社員やOBなどが改正GMPに関するセミナーや書籍を発行するであろうが、「医薬品品質システム」の本質を理解している人は皆無に近いであろう。
ICH Q10(医薬品品質システム)の取り込みはグローバルな流れでもある。
したがって、改正GMP省令においては、ICH Q10の浸透が強く要求されることになる。
改正GMPにおいて、最も大きな追加事項としては、各種SOPにData Integrityの要件を追記しなければならないことだろう。
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